鯉口の切り方について①

鯉口(こいぐち)とは、刀の鞘の口の事です。
「こいぐち」とも「こいくち」とも訓まれるようですが、武術の世界では比較的「こいぐち」と訓まれる事が多いように思います。
天心流兵法でも「こいぐち」を用いております。

鯉が口を開ている姿に似ているので、そのように呼ばれております。


↑鯉口

・Google画像検索「鯉の口」
※魚や鯉の苦手な方は開かないで下さい

いかがでしょうか?
似ておりますでしょうか?
断固似ていないと憤りを覚えたとしても、残念ながら既に定着しておりますので、変更は難しいかと思います。
そんな方にも朗報です。
実は鯉口以外にも呼び名があるのです。

鞘口

あまり一般的に用いられないようですが、鞘口(さやぐち)とも称されます。
そのままですね。
江戸期には既に用いられていた言葉ですが、なぜこちらがスタンダードな名称として用いられないのか少々不思議です。
分かりやすくて使いやすいように思いますが。
ちなみにこの鞘口には「本心を隠した、うわべだけの口上」という程の意味もあるそうです。
本身(ほんみ)を隠す事と本心(ほんしん)を隠すという事で、当て字的に用いられたのでしょうか。
何れも一般的には用いられていないようです。

せっかくですので、用例を出しますので、信用出来ない発言や、上辺だけの言葉に対して遣って下さい。


恋の鞘当てかと思いきや、七郎右衛門はまったく歯牙にも掛けない様子で、嫉妬のしの字も見えない。
それどころか「そのような女はくれてやろう」とまで言い出す始末。
「鞘口で箆を使いやがって!!」
と怒った小十郎は刀に手をかけ鯉口を切った。


というように、是非とも日常生活でも活用して頂ければと思います。
そして、これで「鞘」を使った言葉を二つも覚えた事になります。

恋の鞘当て

恋の鞘当て」は「女性をめぐった男の闘い」という程の意味合いで用いられます。
鞘当て」とは文字通り日本刀の鞘同士が当たってしまう事をです。
刀は武士の象徴にして魂ですから、これにぶつかるというのは、謂わば買ったばかりの新車に十円疵を付けられるようなものです。
いやもっと大変な自体です。
今なら十円疵位は、深夜の通販番組で売っている、キズ消しクリームでどうにかなるかもしれませんし。
(実際、根気よく使うと意外に効果があるとか)

武士同士が互いの鞘を当ててしまえば、それはもう揉めに揉めます。
時代劇ならば即斬り合いが始まるのでしょう。
もっとも泰平の江戸期ではそう容易く刃傷沙汰も起こせませんので、必ずしも殺し合いになるとも限りません。
互いに「抜くか!抜かぬか!」と言い合い、抜く姿勢を見せて牽制、鯉口を切るか切らぬかという所で誰かが仲裁に入り、後に水杯で手打ち、義兄弟の契りを結ぶ…というような
こういった盃事は、ヤクザの世界に見られますが、そもそもは武士の世界の儀礼でした。
任侠の世界はそれを模したのですが、現在ではヤクザの世界と神前式での三献の儀(いわゆる三三九度)などに見られるのみとなっております。

モトサヤ

どんどん脱線していますが、他にも鞘を使う言葉としては「元の鞘に収まる」というものがあります。
比較的若い世代の方でも、「モトサヤ」という略語で今も使われているとかいないとかですが、流石に死語でしょうか。
死語という言葉自体も死語のように感じますが、昨今では何か代わりの言葉があるのでしょうか。

抜刀した刀は用途を終えれば元の鞘におさまる、納刀される事から、別れたカップルがまた付き合う事を元の鞘に収まると言うようになったようです。
もっともただの抜刀納刀ではなく、もっと厳しい離別が語源という説もあります。
往時の懐事情厳しい下級武士や浪人などは、こっそり本身を質に入れ、安い刀身や場合によっては竹光に差し替えたりした事もあったそうです。
どうにか質草が流れる前に用立て出来れば、無事に刀は元の鞘に収まるという塩梅。

竹光と言えば映画「切腹」(1962年)やそれをリメイクした映画「一命」(2011年)が思い出されます。

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どちらも名作ですので、是非ご覧下さい。

漫才と漫談

このように脱線が続きますと何か漫才…いえ漫談のようになっている気も致します。
ですが門人から、「最近更新ないですね。ちゃんと更新して下さい」と厳しく叱られる日々ですので、このように小ネタを拾って、あたかも大学生のレポートの如く文字数を稼ぐしかないのです。

ちなみに漫才と漫談は別です。
漫才は「2人組で披露される演芸・話芸の事」だそうで、漫談は「世相などを話題として風刺や批評をまじえた軽妙な話芸」なのだそうです。
なので基本的に漫才は2人(ないしは複数形)、漫談は1人(ないしは単数形)という区分で良いのでしょう。
もしお笑い芸人を目指しているご友人がいたら教えてあげましょう。
居ない人はもうムダ知識として今すぐにでもすっぱり忘れた方がいいでしょう。
恐らくは使うタイミングがないでしょうし、もし合コンの席で「漫談と漫才の違い知ってる?」とネタに使ってしまい、まったく興味を引けずに場を盛り下げてしまっても当方は一切の責任を負えません。

さて本題の鯉口の切り方についてですが、流石に長くなりすぎましたので、次回の記事に続きます。
パソコンに向かって思いついた取り留めもない事を、適当に書いていたら、実にバカバカしい記事になってしまいました。
と徒然草序段を模倣してごまかす事に致します。

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