Twitterでちょっと話題になっていた歌川広重『名所江戸百景』です。
非常に面白い構図ですが、手前の馬が足に草鞋を履いています。
これは馬沓(うまくつ・うまぐつ)と呼ばれるものです。
(ちなみに牛の場合は牛沓と呼ばれるそうです。)
千年ほど前から日本で使われてきた馬具のひとつです。
一般に馬の足につけるのは馬蹄のイメージがありますが、日本で馬蹄が普及したのは明治以降です。
そもそも野生馬には馬沓も馬蹄も基本的に必要ないものだったそうです。
家畜化したことで、栄養バランスが損なわれ、厩舎など一つ所留まることで足元が糞尿によるアンモニアの土壌汚染による影響、荷など負荷、舗装された固い道…そういった複数の要因によって蹄が弱ったために必要になったようです。
しかし江戸期までの馬は比較的強い蹄を持っていたようで、悪路や雪道の場合や、荷馬などに用いられたとも言われます。
同じく歌川広重が描いた、「東海道五十三次」でも多くの荷馬の足に馬沓が見られます。
大坂夏の陣図屏風にて、徳川家康公の御馬が馬靴を履いています。
同屏風絵の他の馬では見られません。
また他の合戦屏風絵でも見つけられませんでした。
格別のこととして神君の御馬にのみ描いたものかと思われます。
実際の合戦における馬沓の使用については、今後の文献研究が必要です。
道の駅に馬沓売ってるの笑う(712円) pic.twitter.com/T9GMrbgNVi
— 左近大夫☆浜次郎 (@sakone_shogen) April 7, 2020
現代でも一部にはお土産として作られているようです。
実際、馬沓を履いた馬の足音はどのようなもので、またどのくらいで履き替えが必要だったのか…。
往時のそういったナマの話はなかなか文献などには記載もなく、調査が難しいものですが、そういった当時の様子を想像するのはとても楽しいことです。