天心流兵法の剣術
組太刀が七本と非常に少ないのが天心流兵法の特徴の一つです。
小太刀一本を含めました七本の組太刀しかありません。
この組太刀は本来、切紙以上の上練者が修業の仕上げに学ぶものです。
それまでの剣術の修業は「刀法(とうほう)」と称します技法を学びます。
これらは単発の技法郡であり総数は百を越えます。
そのように多くの技法を学びましても、実戦では使えるものではありません。
ですが知らないという事は恐ろしい事です。多くの手数を知らなければ、未知の技法に簡単に破れる事もあります。
また人間はそれぞれに得手不得手があります。無数の技法の中で、得意とする十八番の技法を見つけ、それを専心に磨くのです。
多々ある技法を余すことなく練り上げるのではなく、己のスタイルを見つけ磨いていく事を目指すのです。
さらに技術を練り、また攻防の機会、間合を学び、咄嗟に技が出るよう熟練するため、それらの刀法を複数組み合わせて工夫し、続けて使う稽古を行います。
つまり門人各々が工夫して、一連の勢法(型)を創案すべしという教えなのです。
これは通常、定められた手順を履行する事で学習する一般的な流儀と一線を画した、天心流兵法の大特徴と言えます。
千変万化の組太刀
天心流の組太刀は僅か七本ではありますが、『攻防の五体 天地陰陽真』と明暗の七法と掛けあわせまして、実際は四九本とされております。
『攻防の五体 天地陰陽真』の天は上段、地は下段、陰は右、陽は左、そして真は中心、それに加えての明暗、これは明が前で、暗が後ろを指しています。
四方八方のような意味合いであり、互いに隙を探り打方、仕方に関係なく、『隙があらば変化して勝つ』という千変万化の稽古が組太刀なのです。
とは申しましても、他の流儀の型も変化がないわけではないかと思いますが、この組太刀は稽古の総仕上げとして、それまでは単技としての刀法と、それを各々が工夫して続け遣い勢法となして剣技を磨くというスタイルに、非常に特筆すべき特徴があるのではないでしょうか。