【鍬海 政雲】
ある男性芸人の方のエピソードトークが話題になっていました。
エレベーターで女性に同乗を避けられた(見知らぬ男性と密室で二人きりになるのを避ける防犯対策)ことにショックを受けて、嫌がらせに乗ったまま下まで戻った…というものです。
プライドの問題は難しいものです。
しかしその芸人の方が受けるショックよりも、万が一のリスクのほうがやはり重要であると言わざるを得ません。
状況は異なりますが、場合によってはプライドだけの問題ではなく、痴漢冤罪というその後の人生、社会的地位にまで影響を及ぼす可能性も有するものです。
ですが過剰な程に警戒し、注意してもなお、しすぎるということはありません。
日本の社会は国際的に見れば非常に安全で治安が良いとされます。それは事実でしょうが、表沙汰になっていない事件、そして未然に防げている未遂を含めると、実は「特に男性では気づかないような」危険がかなり多いのが実情です。
どうしても女性と比較して危険が少ない男性にとっては、警戒されたりするとショックを受けますし、また何もそこまで…大げさな…と捉えてしまうきらいがあるのはある意味で仕方のない部分かもしれません。
だからこそ、実は安全と水はただと言われる日本ですらも、少なくとも多くの女性や、また子供などにとっては、決して無警戒で過ごせる社会ではないという現実を多くの人が知っておく必要があります。
そしてそういった、護身、保身ということを考えた時、警戒しすぎるということは基本的にないと考える土壌が培われることを祈っています。
確かに平和で安全な暮らしは、反社会的な気質などをもたない多くの人々にとっては共通の願いです。
そして私達の誰しもが、平和で安全な暮らしを送る権利を有しています。
しかし権利はしばしば侵害されるものであり、国家機構、警察も私達のために日々健闘してくれていますが、決して十分ではなく、あくまでも犯罪予防、抑止より犯罪の取り締まりや逮捕の性質が強くあります。
もちろん抑止力効果はありますが、抑止・予防のためとして監視社会のようになるのも国民が望むことではないでしょう。
ですから、各自に自衛意識が必要なのです。
男性社会、ことさらに武術・武道界隈などでは、警戒、恐れなどは勇気がないものと低く見る傾向にあります。
確かに武術において、いざという時に勇敢に戦う、肝がなければ、せっかく技術を磨いても役立つものではないのは、老若男女変わらない事実です。
しかし同時に、30年以上、闘争の術を学んできた結果としてわかるのは、もし人を害そうとするならば、無数に方法はあり、それはいかに武芸に達していたとしても、到底完全に避けられるものではないということです。
ですから古来より、勇猛さと同時に、臆病さ、警戒心を徹底的に武芸や武士の心得として説かれてきたのです。
ウィルスという驚異に世界が狂乱し、社会秩序が混乱し、今度はまさかの戦争によって、対岸の火事とは言えない驚異にさらされています。
まさかが起きた時にはすでに遅すぎるからこそ、事前に出来る備えを行うことは臆病者ではなく、賢い者の行いです。
目次
自宅での防犯対策
比較的かんたんに出来るもの、また私が行っているものです。
窓ガラス周りとしてガラス強化シートと、窓破り防止のセンサー(強風などでは鳴りません)、それからセンサーで点灯するソーラーライト。
チェーンロックがなく、また外出時に二重にしたかったので外から施錠解錠可能なガードロック。
またこうした防犯カメラなども有効でしょう。
バイクや車など、昨今ではドライブレコーダーが多くの事故や犯罪を記録し、同時に存在が抑止力ともなっています。
私も多く経験していますが、自分が悪くなくとも、厄災は向こうから舞い込んで来ます。そして、時にはそれは避けられないものです。
護身グッズ
よくある護身グッズとしてイメージされるのはスタンガンです。
しかしこれは基本的に違法となります。危険物を隠して携行するのは高確率で違法とされるますし、公に晒して持ち歩くのも他者に脅威を与えることとなり違法とされる可能性が高いです。昔は護身用としてナイフや木刀を持っているという話を聞いたこともありますがこれも違法です。(自宅に置くなどは合法です)
また催涙スプレー、防犯スプレーなども同様になります。
そしてそうしたものは実際の場面では用意することは難しく、また逆上させる、奪われるなど却ってリスクを増大させるおそれもあります。
そういう観点ではもっとも良いのは防犯ベルでしょう。
自意識過剰と思われようとも、ぜひ女性や子供だけでなく、全国民がカバンに付けておくのが良いでしょう。
男性でも危急時には役立ちます。
ただ、こういったものは、実際にすぐ使える状態にすること、そしてもし可能ならば、あからさまにそれとわかるようにするのが抑止力としても好ましいといえます。
そしてもう一つが、定期的に鳴らして確認し、咄嗟に鳴らせるように手が自然と動くまで繰り返し練習することです。
鳴らして止めるまで出来れば、間違えて引き抜いてもすぐ戻せるという安心感が生じて、躊躇しにくくなります。
護身術
武道など、護身術として学ぶという人もいるでしょう。
海外では特に、護身としてかなり真剣に学ばれています。
「生兵法は怪我のもと」などと揶揄されることもありますが、私達が子供の頃にはそれほど真剣に取り組んで来なかった防災訓練にも実は大きな効果があるということが分かっているように、的確な訓練を行うのは護身でも大きな意味があります。
また何より、実際にどこまで使えるかだけが問題ではなく、これは家庭での防犯対策、防犯ベルなどと同様に、やはり安心感に繋がるという側面も決して軽視出来ません。
過信は禁物ですが、不安感を抱えていたずらに怯えるのではなく、いざとなればこうするという備え、保険があることで、健全に安心して生活出来ます。
心構え
心構えも大切です。
・出来る範囲では暗がりを避ける
・一人歩きを避ける
・人気のない場所、時間帯を避ける
・エレベーターなど密室で見知らぬ人と一緒になるのを避ける
・危険そうな気配を感じたら場を離れる
冗談半分で「私なんか誰も襲わない」などというのは避けましょう。
多くの悲劇は予告してくれません。
痴漢など、「いやなら声を出して捕まえればいい」などと安易な考えをしてしまう人もいますが、現実はそう簡単な話ではありません。
あらゆる非常事態において、私たちは自分が考えているほどに、最適な行動を取れません。
なぜなら、そもそもそうした時に、なにが最適かなど簡単にわかるものではないからです。
事後に、情報を仕入れて結果までわかった上で、したり顔を対処法を説くのは簡単です。
今一度、多くの人々が生活の安全に意識を向けて、護身、保身を各々に心がけることで、日本全体としてそうした防犯意識が高まることで、自ずと社会全体が強い抑止力を構築することに繋がるのではないかと思います。
今回の炎上が、芸人さんへの個人攻撃ではなく、今一度私たち一人ひとりが認識を改めて、みんながより一層安心に暮らせるようになるための一助とするのが何よりなのではないかと愚行致します。