天心流兵法 第十一世師家 相伝印可について

  • 2019年4月24日
  • 2021年1月14日
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皆様御存知の通り、来る2019年5月1日に平成が終わりを告げ、令和へと改元がなされます。
この境目と成る日を、天心流においても大きな転機となることをお伝え申し上げます。

流儀の道統を守り伝えることにおける定義は各流儀によって異なるかと存じますが、天心流におきましては初許、中許、奥許、切紙、目録、免許と六段階ある伝位のさらに上、格別であり唯授一人として、相伝印可があります。
一人の師家が一人に師家を譲るという形で流儀が正当に継承された証となります。

江戸時代初期には、武家における跡目相続問題がありました。
つまり家長(当主)が急逝した際に、嫡子が御目見(おめみえ。見参、御対面などとも呼ばれますが、上司の謁見を賜ること。)を果たしていない場合など、そのまま世嗣断絶(よつぎだんぜつ)となるという問題(いわゆる御取り潰し)でした。
これは家を支える上で、いかなる危急の自体にも応じられるように、予め予防策を打っておくのが当然という気構えを示す(側室、妾なども基本的には乳幼児の死亡率も髙い時代に、保険として必要なものとして存在しました)ものでもありましたが、時代が下るに連れて、当主が急逝した際には、体調不良ということにして勤めを休み、その間に隠居に伴う家督相続、御目見を済ませて代替わりを行うということが公然の秘密として行われるようになりました。

こうした相続問題は日本の制度上における一つの問題として存在し、様々に工夫がなされてきましたが、天心流においてどのような工夫がなされていたのかはわかりません。
天心先生の時代には特にそうした保険をかけることがなかったため、もし天心先生に何かがあった際には、そこで流儀の正統が途絶するということになります。
東日本大震災の一月ほど前、入門から三年満たなかった私に、天心先生が内証として太刀を授け、流儀を託したとお伝えされたのは、一つの保険であったとも言えます。
しかし直後の震災、またご友人の訃報などに接し、危機感を募られた天心先生は、その一年後、2012年に正式に私に相伝印可を出されて正式に師家を継承することとなりました。

若輩にして、かつ流儀の修業歴が現代においては極めて短期間といえる相伝印可でしたが(江戸期においては数年を経ずに免許を得たり流儀の継承というのは特段珍しいものではありませんでしたが)、古武術や諸芸道に限らず、企業などにおいてもわかるように、先代急逝によりその本体が揺るぎ、内部崩壊してしまうというのは珍しいことではなく、そうした事態を未然に防ぐというのは、本当にその重要性を鑑みた時、必須の取り組みであると言えます。

そのことから二年前、私は自身の身に何かが起きた際には、井手 柳雪代範に師家を継承する旨を流儀内外において伝え、天心先生、武井塾頭の立合いの元、もっとも門人が参加する天心流合宿において門人出席の上で、日付未記入の上で相伝印可を授与しました。

天心先生がご健在であり、かつ最古参の門人である武井塾頭、そして多くの天心流を支える門人があれば、私がそうであったように未熟であってもその役目をまっとうすることが出来ると信じてのことです。

私は2012年に流儀を継承しましたので2022年には師家を継承し十年となります。
この十年を一区切りとして井手先生に相伝をお渡しするつもりでした。

しかし私事ではございますが、昨年、過重なストレスによるものと思われる顔面の麻痺が一ヶ月ほど続き、それが収まってしばらくの後、手足の麻痺などの症状が出るようになりました。
脳梗塞の初期症状と思われるものです。
祖父も脳梗塞が原因で亡くなっていますが、これは極めて危険な兆候です。

今は症状が落ち着いていますが、非常に難しい仕事内容と、人生数回分と思われる仕事量があり、流儀の運営も容易ではありませんし、さらに当流の活動を悪意をもって妨害、誹謗中傷し、脅迫的な行為を行うアンチの存在もあり、かかる負担とストレスは尋常なものではありません。

もとより流儀を相伝した時に、流儀の伝承と保存のため身命を賭すという誓いを立て、流儀に捧げた身であり、命は惜しくはありません。
しかし、その役目を果たさずに事切れれば、多大な迷惑をかけるだけでなく、最大の目的を果たせないことになります。

無論、向後もますます天心流兵法の伝承と保存のため、全力で邁進することには変わりありませんが、かかる事態に備えるべく、

前述の通り、早世により流儀が途絶するのは古来よりあったことであり、これを予防すべくスケジュールを早める事とし、令和への改元をもって井手 柳雪先生への相伝印可を決断致しました。

令和元年五月一日をもって、天心流の第十一世継承を行います。

井手先生は私の兄弟子にあたりますが(私と天心先生を引き合わせて、私が入門するきっかけになった方です)、師家の元にはすべての門人は弟子となるため、私が師家を継承した時点で、井手先生は私の弟子という形になります。
井手先生は私より長く天心流を学んでいますし、また私と異なり井手先生は初めて学んだのが天心流であり、正式に学んだのも天心流だけの生粋の門人です。
まだ天心流が門戸を開放すらしておらず、門人を募集していない時に一年かけて天心先生に依願し続けて入門し、そして公共施設も借りておらず、個人教授のみだった時代を知る古参の門人です。

そして重要なこと井手先生は私よりお若いことです。
そう大きく年齢は離れていませんが、今後の伝承を考えれば、一代で二十年、三十年と師家を務めることはリスクマネジメントとしては避けたいという意味でも、適材といえます。

時期尚早なのは確かなことであり、心配される方もいらっしゃるかもしれません。
しかし私は井手先生が師家を継承するに相応しい器があると確信を持っております。
そして天心先生も健在であり、私も引退するわけではなくこれまで同様、またこれまで以上に天心流のためこの身を捧げる所存で御座います。

そしてさらには、天心流を支えてくれているたくさんの門人が居ます。
皆様には今後ますますのご指導、ご鞭撻、ご協力を賜ります様、伏して御願い申し上げます。

天心流兵法 第十世師家 鍬海政雲

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